『有志会員の間で、数年来の持ち越し課題となっていた矢代川第3発電所を基点に、火打山燕尾根を登高し澄川を滑走する周回企画に参加させていただきました。
個人的にも、昨年同行させていただいた火打前衛の大毛無山~容雅山縦走時に、容雅山山頂から望まれた登路はとても長大で圧倒されましたが、澄川沿いの下降は快適な滑走が期待できそうで、一度滑ってみたいと思わせるルートでした。
天候も安定する3月中旬の週末、M森さん、I江さんと訪れる機会を得ましたので、以下に報告させていただきます。』西菅沼新田先の矢代川第3発電所に到る林道の除雪終了地点より入山。積雪は概ね1m。翌日の下山時には更に融雪が進み、このところの急激な昇温もあり、シーズン後半戦は短そうな予感。
第3発電所手前に差し掛かる頃よりは垂れ込めていた雲も取れ、暖かい春の日射しに汗ばむ長閑な陽気。恐ろしげな吊り橋で濁俣川を左岸に渡り、送水管に沿って急斜面を一段登り上げ、澄川との中間台地を進み燕尾根末端に導かれる。
登路の燕尾根は、4つのコルと夫々顕著な懸崖を有する岩稜・雪稜が混在する尾根で、スキーでのルートは、稜線どおしというよりは、主に北側斜面のトラバースを織り交ぜながらしながら高度を上げる。
第1コルから第3コル付近までが核心部と思しき箇所で、ここを初日に抜けられれば翌日の目鼻も付くねと歩を進めるが、回りこんだ尾根北側は堅い急斜面で、装着したクトーでもやや荷が重く、ツボ足アイゼンに切替える。この第2コルまでの登りは個人的に酷くこたえ、ヘロヘロ状態で何とか第2コルに辿り付く。時間的にも初日の行動はここまでとし、I江さんのツェルトに3人で快適な一夜を過ごす。
翌日は4時起床。朝一のお勤めはコルからの急斜面の登高。夜間の冷込みで雪も締り、持参したピッケルも登場の機会を与えられる。澄川を隔てた北側の容雅山の南斜面には大規模な雪崩跡も視認でき、斜面の所々に走る亀裂や空洞に注意しながら進む。
第3コルは、北側斜面を大きく巻き気味にルートを採ったため確認できなかったが、黒菱山の南東側の広い雪原で再びシール登高に切り替える。最後の第4コルからは、傾斜も緩く感じられたためスキーでジグを切りながら進むが、上部雪庇下の旧雪層の上に薄く積もった新雪の表層雪崩を誘発し、足下を払われる格好で約50-60m程流される。幸い下部が広く開けた平坦地で、速度も遅く人的・物的な被害はなかった。再度ツボ足アイゼンで直登し、尾根上でスキーを履き稜線北側斜面をクトーを効かせながら斜上する。
ここまで既に約6時間が経過し、時刻も正午を迎えたため、火打山頂手前の燕尾根最上部標高2,230mの小ピークより澄川に滑り込む。上部北東面は、やや堅めながら雪質も軽く、登りの長さを忘れさせてくれる素晴らしい大斜面。やがて明瞭な沢地形となるが、名前のとおり大きな滝や高い側壁を擁するゴルジュなどの悪場のない総じて明るい渓相で、スキーに適した谷の印象。高度を下げるに従い、少しずつ雪も重くなるが、その後も快適なダウンヒルが続く。
途中、容雅山側からのデブリが谷一面を覆っている一箇所のみスキーを外すが、北桑沢出合まで沢身のブリッジも健在で沢どおしに滑走することができた。シールを貼って中間台地に登り返し、往路に合流。発電所の下降・登行でシールを脱着し、最後は1時間の林道滑りで西菅沼新田に帰着。
『天候にも恵まれ、なかなか変化に富んだ山行となりました。終始先導いただきましたM森さん、I江さん有難うございました。』
【今回の山行で遭遇した雪崩の概要等】
※例会(2018/4/7)で報告した「重要インシデント報告」より転載
気象庁HPより
日本海の高気圧が本州に向けて東南東進。糸魚川アメダスでは昼前から晴れ間が出てきた。最低2.2℃、最高6.1℃(平年は3℃、10.7℃)で、平年より気温が低かった。
高気圧は日本の東へ移動、糸魚川では昼過ぎから雲が出てきた。最低0.5℃、最高12.6で最高気温は昨日より6℃以上高かった。高気圧後面に入り、南寄りの風が入ったためか。